リフォーム事業 業種・業態別の成功のポイント |
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別稿でもふれたとおり、リフォーム事業の「成功」への道は無限にあると思いますが、「失敗」にはあきらかに共通点があります。
私は某住宅設備会社のリフォーム事業支援の部署に勤務していた頃から30年以上、リフォーム事業に取り組む企業の様々な盛衰を見てきましたが、あきらかに同じような原因で毎年毎年多くの会社がリフォーム市場から淘汰されています。
ある失敗したリフォーム会社は極端に他社の「真似」を嫌がるケースがありました。10年、20年かかってから成功する余裕があるならはじめからオリジナリティを追求していくこともよいと思います。
しかし、新規事業は多くの場合は2、3年で結果が求められます。あのイチローでさえ手本とするバッターのまねから始まり、アレンジを繰り返すことで自分のものにしていったのは有名な話です。
ここでは、わたしが過去30年間で面談したリフォーム会社3000社の中から、リフォーム事業に参入することが多い業種・業態別に、特に失敗の典型的な事例をまとめてみました。 |
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設備・水道業からリフォームに進出する場合 |
設備・水道業の「元請会社」がリフォーム事業に本格的に進出する時の最大の強みは修理顧客の多さでしょう。まったくの新規創業でなければ現在のストロングポイントを活用して新たな成功を目指すのが王道です。
修理顧客を数多く持つ「元請会社」は潜在的にリフォーム事業に成功する大きな資質をすでに持っていると思います。
また元請けで長い間エンドユーザーとかかわり続け、きめ細かなお客様の要望に対応してきたことは、本当に大きな武器となります。非元請けから参入してきた場合、エンドユーザーと上手に関係を築けずにとん挫することがよくあります。
設備・水道業の「元請会社」がリフォーム事業に本格的に進出する場合の課題を考えてみましょう。
新規顧客の開拓ももちろん大切ですが、むしろ顧客管理ソフトをフル活用して、OB客とのコミュニケーションを密にし、「水廻り中心リフォーム」の範囲で具体的には、特に単価の高いキッチンなどを積極的に扱うことで少しずつでも提案力を強化し、平均単価をアップし、OB客が求める全ての部位のリフォームを積極的に取り組んでいく必要があると思います。
トイレは強いけれど、キッチンはどうも・・・というような苦手部位を段階的に無くし、単価の高いキッチンや浴室リフォームには特に注力し、水廻り以外の部位も少しづつ積極的に請けられるような体制を作ることで、固定客のリピートを増やし、地元にどうしても必要な会社になることが必要だと思います。 |
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修理客はいくら多くてもリフォーム事業専用の顧客管理ソフトなどできちんと管理されていなければその強みを活かすことはできません。弊社ソフトの新たなユーザー企業でも修理客を中心に数千件の顧客データベースを持つ会社が増えています。
これらの顧客に対し、辛抱強く、繰り返し、繰り返し、「修理会社」のイメージを「リフォーム会社」のイメージに高めていくための情報発信をダイレクトメールやリフォーム相談会やショーツール見学バスツアー等のイベントで継続していかなければなりません。「修理会社」のイメージのままでは単価の高い物件の引き合いそのものがは取りにくくなると思います。
高い成長率も求めない限り、顧客への情報発信を継続することで景気動向に左右されにくく、リピート率が高いため、粗利益の高い、地元に根付いた優良会社になることが十分に可能と思います。 |
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「水廻り中心リフォーム」では1店舗で売上0.8〜1.5億程度を突破したときに、大きな壁にあたる会社が多いようです。その壁は主に「プレーヤー」から「マネージャーへ」の壁と言われています。「プレーヤー」とは現場をこなす担当者で「マネージャー」とは経営管理全般の担当者です。多くの成功店は売上の成長とともに社員が増えますので、「プレーヤー」から「マネージャーへ」自己変革していかなければなりません。実際にはこの中間で「プレイングマネージャー」の時期をどう乗り切るかが大きな課題です。「プレイングマネージャー」の時期で停滞している会社がかなり多い印象です。
もう一つの壁は「水廻りリフォーム」から「総合リフォーム」への壁です。設備・水道業の場合、この壁も大きな課題となる事が多いようです。
私の経験では、会社が保有している工事の技術などはあまり関係なく、前述の「マネージャーへ」の壁を超えられる会社は「総合リフォーム」の壁もなんなく超えてしまうことが多いように思います。その過程で二級建築士などの取得を目指すことも数多くの事例があります。「総合リフォーム」への壁を乗り越えた企業は年商3〜5億程度の「地域一番店」になる事例が多いようです。 |
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逆に設備・水道工事店であっても工務店の下請けや役所仕事がメイン業務だった「非元請会社」はエンドユーザーとの好感度の高いアプローチや顧客開拓そのものが当初から苦手なケースが多く、苦戦中の会社が多いのは事実です。
「非元請会社」には二つの大きなハードルがあります。一つは顧客が「業者」から「エンドユーザー」に変わるというハードル。もう一つは今まで限定した得意先(役所や元請)から繰り返し注文を受けていたため取り組むことがすくなかった「新規顧客の開拓」というハードルです。この二つのハードルを乗り越えるために必要なものは一言で言うと「起業家精神」しかありません。
このような会社は手っ取り早く、例えばメーカーのチェーン店に加盟することで弱点を克服しようとする場合が多いようですが、メーカーチェーンに加盟しただけでは、見た目のイメージは変わっても、会社の本質は変わり映えしないことも珍しくありません。また2020年現在、リフォーム事業に注力している住宅設備会社は一時よりも激減しています。
外注のデザイン会社などを使い、企業のイメージがよければよいほど、社員の言葉遣いや応対、リフォーム事業そのものの進め方の熟練度などで、お客様ががっかりしてしまわないようにしなければなりません。 |
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「非元請会社」で住宅リフォーム事業に成功している会社はトップが率先していままでの社風を変革しています。これができなければメーカーのチェーンに加盟したり、コーディネータの女性を採用したり、ショールームを造るといった小手先の変化ではこの高くて大きな壁を乗り越えることは難しいと思います。私が数多く見てきたリフォーム事業参入の失敗例はこの社風の違いを乗り越えることができなかった会社が多数をしめます。
もちろん「非元請会社」で成功しているケースもあります。跡取の息子に全面的に権限委譲し、別会社などを作っていわば経営の修行をさせているような場合が多いと思います。このように絶対に失敗も逃げも許されない、踏ん張りのきく状況でなければゼロから顧客を開拓し、成功するのは難しいのではないかと私は思います。ショールームを作って、営繕部門の部長を責任者にし、親会社からの紹介で売上を補填しているような環境で成功する道はきわめて険しいと私は思います。 |
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